2008/05/28

オリエンテーション

第1回の公開講座では、事務局から以下のような説明をさせていただきました。

■スケジュールの確認
・前期6回 公共性・多様性・マイノリティ
 5/16(金)オリエンテーション|木下直之(文化資源学)
 5/30(金)基調講演|大沼保昭(国際法)
 6/13(金)事例1|中村雄祐(言語動態学)
      ※講義終了後、懇親会を開催します。
 6/27(金)事例2|南嶌 宏(芸術学)
 7/11(金)事例3|妹島和世(建築家)
 9/12(金)グループワーク発表
・後期7回 記憶・身体・コミュニティ
 10/10(金)オリエンテーション|小林真理(文化資源学)
 10/24(金)基調講演|沼野充義(スラブ文学)
 10/31(金)事例1|田中 泯(舞踊家・振付家・農業者)
 11/ 7(金)事例2|野田秀樹(劇作家・演出家)渡部泰明(日本文学)
 11/21(金)事例3|鳥越けい子(サウンドスケープ論)
 12/ 5(金)事例4|山口洋典(浄土宗應典院)杉山知子(アーティスト)
       木ノ下智恵子(アートプロデューサー)
 1/ 9(金)グループワーク発表

■基本的な授業の流れ
授業開始前(18:40まで)に教室前で出席を確認
(出席カード提出、押印、リストのチェック)
18:40 開始
 講義(60分)
 グループディスカッション(15分)
 質疑応答(25分)
20:20 終了

■グループ編成の説明
受講生はA〜Jの10のグループに分かれて着席します(グループ分けに意図はありません)。
グループは、各回の講義での意見交換や質問の集約、前期および後期の課題(後ほど詳述)に取り組む際に協力しあうなど、受講生の積極的な参加による双方向の授業を行うために編成します。
1つのグループは10人前後で編成し、公開講座の運営委員とアシスタントを配置しています。
グループ内で、議論をリードする「グループリーダー」「サブリーダー」を決めてください。
講義以外の時間もグループでの議論や情報交換を活発に行っていただくため、各グループでメーリングリストを開設※します。
グループ内での議論の活性化や、グループとしての課題作成の取りまとめや課題の発表には、アシスタントが協力します。
※事務局以外にはメールアドレスは非公開としておりますが、メーリングリストの参加を希望されない方は、事務局にお申し出下さい。

■レポートとコメント
各回の講義は、アシスタントが概要のレポートを作成し、ブログに掲載します。
ブログ上のレポートに対して、1グループにつき2人の受講生は、コメントを投稿して下さい(受講生全員が、前期と後期で必ず1回ずつはコメントを投稿して下さい)。
誰がコメントを投稿するのかは、グループの中で決めてください。
コメントの字数は200字程度※とします。
ブログへのコメントの方法は、メールでインストラクションを行います。

■課題(グループワーク)の説明
前期と後期、それぞれ課題を与えます。
前期の課題は、下記の通りです。
前期6回の共通テーマ「公共性」「多様性」「マイノリティ」という3つのキーワードを手がかりに、現代の市民社会における具体的な問題点を説明してください。

形式は自由ですが、各グループごとにプレゼンテーションできるように体裁を揃えてください。
例えば、各自のレポートをWordファイルにまとめた報告書、画像を使ったPowerPointのプレゼンテーション、webサイトの制作など、創意工夫をしてください。
9月12日のグループワーク発表では、各グループごとに短いプレゼンテーションを行います。
発表されたプレゼンテーションは、公開講座のウェブサイトで発表します。

2008/05/27

感想文●大沼保昭『「慰安婦」問題とは何だったのか メディア・NGO・政府の功罪』

このエントリーでは、アシスタントがあらかじめゲストの著作を読んで、どのような活動をされている方なのか、簡単にご紹介します。皆さんが文献に手を伸ばすきっかけにしていただきたいと思います。

●大沼保昭『「慰安婦」問題とは何だったのか メディア・NGO・政府の功罪』
 今回の講座に先立って、大沼先生の著作を拝読しました。「慰安婦」問題について、ご自身も中心となって活動された、アジア女性基金についてのことを中心に書かれています。「慰安婦」問題とは何だったのか。それを、「『歴史認識』をめぐり『被害国』との付き合いはいかにあるべきか」という問題と共に、「政府・メディア・NGOという公共性の担い手のあるべき姿とは何か」という問いについて読み解くというものです。
 私が興味深いと思ったのは、「多様性」と「公共性」という言葉です。本講座のキーワードとも重なります。漠然とした「国家」という言葉の中に、個々の人間が立ち現れてきます。ちょっと抽象的な表現かもしれませんが…日常では、私達は「個人」でいることに慣れてしまっているかも知れません。しかしマス・メディアや政治の場では、一個人として実行力をもつ主体として関われることに意識的でいられるでしょうか。その行動の先に、同じ「人間」を認められるでしょうか。
 「被害者」の側が背負うナショナリズムを、切り離して考えることはできません。しかし、それを認めつつも「被害者」個人の意向を実現することもまた、重要な解決策の一つといえます。それぞれの元「慰安婦」・その元「慰安婦」自身・問題の解決策、この三者すべてについて「多様性」を認める、そのためには、「個人」の存在を認める社会認識が必要だと思います。また一方で、マス・メディアからアジア女性基金に対する、「国による救済」ではないという種の批判がありました。それに対する大沼先生の、「国民」としての個人は「国家・市民として公共性の役割をはたす存在」であるというご指摘に納得しました。アジア女性基金という民間団体が補償を行うのではなく、「国民」としてアジア女性基金を通して補償の主体となることができる仕組みがあり、そのようなかたちも「公共性」の一つの形だといえます。
 「慰安婦」問題という具体的な事例から、大沼先生の「市民社会」における「多様性」と「公共性」についての考え方が伺えました。
(宮川智美)

2008/05/20

レポート|オリエンテーション 木下直之(文化資源学)

2008年5月16日、第一回目の公開講座が行われました。この日は開催にあたってのオリエンテーションが行われました。オリエンテーションだけだったためか(?)欠席されていた方もいらっしゃったようですが、全体的にタイトなスケジュールの中、自己紹介も含め和やかな雰囲気が保たれ、笑い声も多く聞かれたオリエンテーションだったように思います。

今回の講座は、
・ 東京大学人文社会系研究科長の立花先生のご挨拶
・ 文化資源学研究室の木下先生のオリエンテーション
・ グループ内ディスカッション
というスケジューリングで行われました。今年の講座は、受講生の皆さんで各10人ほどのグループになっていただき、毎回の講座のトピックについてグループ内でディスカッションをしていただくという形式をとります。まず、立花先生がご挨拶でそのことに触れられました。「文化的な営為にどのように参画していくか」ということを考えたときに、グローバル化が進むマルチメディアの時代という現状の中でこそ、顔と顔を合わせたインタラクティブな対話が重要になってくるだろう。ひいてはそのことが「市民社会再生」へとつながりうるだろうから、この講座でもみなさんの積極的な参加を期待します、とのことでした。若干うまいこと丸め込まれた感じがします。

ちなみに、グループ分けはすでに決定しています。今回欠席された方も、次回以降いらっしゃったときに所属グループをお知らせいたしますのでご安心ください。
次に、木下先生のオリエンテーションでは、この「市民社会再生」という講座の趣旨についてご説明がありました。「市民社会再生」講座は、昨年度から3年間連続開講されることになっています。現在の日本の社会において文化がだんだん尻すぼみになってきているのではないか、という問題意識のもとに始まったこの講座は、1年目の昨年度はまず文化の実践の現状を知るという目的で行われました。そこであがってきたキーワード「公共性、多様性、マイノリティ」「記憶、身体、コミュニティ」をもとに開催されるのが今年度の講座です。今年度はこれらの個別の問題のあいだの共有項を考えていくことで、「市民社会再生はどうあるべきか」を探っていきます。これをふまえて、次年度の講座は「市民社会再生」はどのように実現可能か、ということをテーマに開催される予定です。今年度はグループによるディスカッションも行われるので、「市民社会再生」について、熱い議論が行われることになると思います。期待します。
また、木下先生からは不忍池の張り紙という身近な事例から、「多様性」についてレクチャーもしていただきました。こちらの内容は16日発行の講座ニューズレターにも寄せていただいています。今回欠席された方も、残部がありますので次回お持ちになってお読みください。

最後に、グループごとに分かれたディスカッションの時間がありました。ディスカッションといってもまだ初回です。まずは緊張をほぐすためにメンバーの自己紹介をしました。そうして見えてきたメンバーのあいだの共通点を、最後にグループごとに簡単に発表してみました。また、グループ内のリーダーとサブリーダーの選出をそれぞれ行い、今後の連絡やディスカッションのとりまとめ役をお願いすることになりました。
講座アシスタントも一緒にグループに入らせていただくのですが、私のいたグループはアーティストの支援活動をされている方、子供たちを対象に教えられている方、作家さんなど、実際に文化の実践に携わっている方が何人もいらっしゃいました。今後のディスカッションでは、きっと皆さん自分のご経験に引き寄せて議論を展開していかれるのだろうな、と思って一人わくわくした次第でございます。
これはもちろん私の入らせていただいたグループだけの話ではありません。グループごとの発表を聞いていて感じたのは、どのグループにもそれぞれ特徴的な共通点があって、そのグループごとの論点をすでに持っていそうだということでした。グループは無作為に、申し込み順に決定されたということでしたが、それでもこんなにグループごとに個性が出てくるものだなあ、としみじみ感心してしまいました。
さて、次回の講座は東京大学の大沼保昭先生による基調講演です。本格的に講座が始まっていきます。今回いらっしゃった方も、欠席された方も、皆さんぜひいらっしゃって一緒に「市民社会再生」を考えていきましょう。

最後になりましたが、このレポートは講座アシスタントが毎回執筆させていただきます。アシスタントはこれ以外にも、講座全般にわたって皆さんのサポートをさせていただきます。ご不明な点など、なにかありましたらお気軽にお近くのアシスタントまでご連絡ください。
それでは一年間、よろしくお願いします!

文責:赤星友香

著書の紹介|木下直之

順番が逆になりましたが、公開講座の第1回のオリエンテーションで導入の短い講義をしていただいた木下直之先生の著書をご紹介します。

ハリボテの町
1995、朝日新聞社
美術という見世物―油絵茶屋の時代
1999、ちくま学芸文庫
世の途中から隠されていること―近代日本の記憶
2002、晶文社
わたしの城下町
2007、筑摩書房

ちなみに、「わたしの城下町」は、木下先生が平成19年度の芸術選奨文部科学大臣賞の評論等の部門で高く評価された著書です。ぜひご一読下さい。

2008/05/13

受講生のみなさまへ

このたびは公開講座「市民社会再生−文化の射程−」の受講登録へのお申し込みをありがとうございます。実行委員会事務局の予想を上回る多数の登録のお申し込みをいただき、定員満了となりました。
さて、事務局より講座運営の庶務関係について、下記の通りご案内申し上げます。

1.資料代のお支払い
公開講座の資料代は以下の通りです。
通年出席(全13回分)10,000円
半期受講(後期又は前期のみ)6,000円


なお、東京大学の経理規程により、学内での現金の受け渡しは受講生の皆様と事務局、大学の経理部との間に多くの経理的なやりとりが発生してしまいます。そこで煩雑な手続きの発生や受講生の皆様のご面倒を避けるため、誠に恐れ入りますが、お支払いの方法は資料代の金額の多寡にかかわらず、一律に銀行振込とさせていただきます(振込手数料は自己負担となります)。お手数をおかけして大変申し訳ありませんが、お支払いは下記の銀行口座にお振り込み下さい。

三井住友銀行 東京第一支店 普通9519317
口座名義 国立大学法人 東京大学
フリガナ コクリツダイガクホウジントウキヨウダイガク


ATMまたは銀行窓口での振込の際に発行される振込確認用紙をもって、領収書に代えさせていただきます(手書きの領収書などは発行いたしませんのでご了承下さい)。
振込期限は、通年受講および前期受講の方は5月末日まで、後期受講の方は初回の受講日までにお振り込み下さい(振込期限までに入金が確認できず、正当な理由がない場合は、その後の講座の受講をお断りする場合がございます)。

2.アクセス
公開講座の開催場所は「東京大学本郷キャンパス 法文2号館 1番大教室」となっています。特に学外から受講される方は、本郷キャンパスまでの交通アクセスや、キャンパス内の校舎の位置などをwebサイトよりあらかじめご確認下さい。

また、法文2号館の建物内は非常に複雑な導線となっています。特に学外から出席される方は、初回となる講座当日、時間に余裕を持ってお越しいただけるようにお願いします。構内の案内図を下記の通り掲載いたします。


3.出席の確認と修了証の発行
出席回数が8回以上で、与えられた課題を提出した方には、公開講座の修了証を発行いたします。出席は、講座の開始前に1番大教室手前の受付において事務局スタッフが確認いたします。詳細については5月16日の初回の講座において説明します。また、こちらのブログにも掲載します。

以上です。それでは、公開講座の当日、お目にかかることを楽しみにしております。

2008/05/11

定員満了のため、締め切らせていただきました。

事務局よりお知らせします。おかげさまで、公開講座の受講登録は定員満了につき、締め切らせていただきました。
本講座は年間13回の一連の講義を通して学ぶことを趣旨とし、グループワークなどの機会を設けることで、受講生相互のインタラクティブな参加を期待しております。そのため、今年度は各回個別の受講は受け付けておりません。講義当日にご来場いただいた場合でも、入場をお断りすることになります。何卒ご理解ください。

2年目の文化資源学公開講座へようこそ|木下直之(東京大学)

昨年から始まった文化資源学公開講座「市民社会再生」は2年目を迎えました。3年間で、(1)現代日本の社会と文化の現状分析 →(2)問題点の整理と望ましい社会の構想 →(3)構想の実現=「市民社会再生」に向けた方策の開発、という具合に、段階的に考えていこうという企画ですから、今年は、昨年の講座で明らかになった個別の問題を整理し、それらの共通項や構造を探し出すことが当面の課題です。今年から新たに受講されるみなさんも、今はそんな段階なのだということを、頭の片隅においていただきたいと思います。
前期・後期のそれぞれのサブタイトルに挙っている言葉、すなわち「公共性・多様性・マイノリティ」、「記憶・身体・コミュニティ」が、そのための手掛かりとなります。いずれも、昨年の講座で話題になった言葉です。
たとえば、「画一化された社会」という現状を憂い、「多様性を認める社会」をこれからは目指すべきである、という問題が昨年の議論の中から出てきたとします。いや、実際に出てきたのですが、では、どのような状態を指して「多様性」が認められていると見なすのか、という問題をつぎに考えなければなりません。言うは易し、行うは難しです。
文化多様性や生物多様性という言葉をしばしば耳にします。そのつど、多様であることの最小単位は何だろうという疑問が、私には浮かびます。昨年、東大の隣の不忍池に、ワニガメを指して、「異常な生物」に注意という看板が建てられました。そして、すぐに、「異常な生物」は「危険な生物」に訂正されました。生物の多様性を認めるのならば、「異常」な生物はありえないからです。しかし、ワニガメは、人にかみつくという点で「危険」であるばかりか、ある地域の生態系を破壊し、結果的に生物多様性を破壊するという点でも「危険」だと見なされるがゆえに、排除されるのです。看板の「生物」を「人物」に書き換えても同じでしょう。建前としては。
話を人に限って(個人的には、講座の範囲を類人猿まで広げたかったのですが、やむなく人の社会に限定しました)、民族や地域社会に多様性を追い求めるほどに、集団は分解され、最後は個人に行き着いてしまい、多様性=個性ということになりかねません。しかし、個人の中にさえ複数の私がいるという自覚は、みなさんも大なり小なりお持ちではないでしょうか。その一方では、誰もが何らかの集団に帰属しているという意識をたしかに有しているはずです。しかも、その集団は、大は国家から、小は家族や大学や職場などまで複数あるはずです。
国民が画一的な生活を強いられる全体主義国家を一方の極とすれば、その対極には、個人が好き勝手に暮らす社会が想定されます。それらはいずれも、非現実的な社会であり、現実の社会は、両者の中間のどこかに折り合いをつけ、建設されてきました。妥協の産物、といって悪ければ、調整の産物です。新たな社会を構想するということは、新たな調整、新たな仕組みづくりにほかならず、そのためには、いったん「多様性」の理念を問うという作業が不可欠ではないか、と私は考えています。
そんな話から、初日の講義を始めたいと思います。この公開講座は、講師が受講生に向かって、「市民社会再生」の処方箋を、「お待たせしました、ハイ、どうぞ」と渡す場ではありません。いっしょに、処方箋をつくる場です。
そのためにも、今年はクラスを編制し、みなさんで議論する機会を設けることにしました。たぶん、初日にもまた口にすると思いますが、公開講座の会場となる古色蒼然とした法文2号館1大教室は、みなさんが1週間おきに、学校や仕事を終えて帰ってくるホームグラウンドだと思ってください。
1年間、どうぞよろしく。